関連3学会(日本脳卒中学会、日本脳神経外科学会、日本脳神経血管内治療学会)承認
頭蓋内動脈ステント(脳動脈瘤治療用Flow Diverter)適正使用指針(2015年4月策定、抜粋) |
機器 |
1. 治療に際しては、薬事承認を得たFDを用いる。
現在、薬事承認されているのは、Pipeline Flex(Covidien/Medtronic社)であるが、Surpass(Stryker社)、FRED(Terumo/Microvention社)が国内で臨床試験中であり、Silk(BALT社)、Bravo(Codman/Johnson&Johnson社)、MFM(Cardiatis社)など他社にもすでに臨床使用され、本邦に導入を計画している機器がある。 |
適応 |
2. 治療適応は、個別の医療機器の薬事承認条件に基づく。
Pipelineの対象は後交通動脈分岐部より近位の内頚動脈に位置する最大径10mm以上ののワイドネック型脳動脈瘤(破裂急性期を除く)で、その他の部位への適応は承認されていない。また、これまで行われてきた外科手術や血管内治療により、安全に根治的治療が可能と考えられるものに対する適応は慎重に行うべきである。
参考までに、Surpass 臨床試験の対象は、終末部を除く内頚動脈で最大径10mm以上の未破裂脳動脈瘤、FRED臨床試験の対象は、内頚動脈・椎骨動脈・脳底動脈の10mm以上の嚢状動脈瘤、紡錘状動脈瘤、多房性動脈瘤などである。 |
3. 実施医療機関は、高機能血管撮影装置および常時脳神経外科手術を行える環境を有する必要がある。
脳血管内治療を行うことが出来る環境、すなわち血管造影室または手術室に血管撮影装置を備えていることが必須である。また治療中および治療後に外科治療を要することがあり得るため、脳神経外科手術が常時行える環境を有することも必要である。安全に留置するためには機器のX線透視下での視認性が重要であり、高機能血管撮影装置が設置されていることが望ましい。 |
4. 実施医は、脳血管内治療、特に脳動脈瘤に対する血管内治療および十分なステント支援脳動脈瘤塞栓術の実績を有する脳血管内治療専門医が行う必要がある。
脳動脈瘤に対する血管内治療、特にステント支援下の脳動脈瘤塞栓術の経験は、実際の手技および術前から術後の患者の経過観察に役立つ。 |
治療 |
5. 術前に、血管撮影を行い、正確な血管径と留置長の計測を行う。脳動脈瘤の形状や血管走行を参考に適切な機器を選択する。MRIの実施は、出血性合併症の予測に役立つ可能性がある。 |
6. 個々の機器の標準的取り扱いおよび留置方法を遵守し、安全かつ正確にFDを留置する。 |
7. 留置後のFDの母血管への密着を確認する。 |
抗血栓療法 |
8. 周術期から術後まで、抗血小板薬の併用療法が勧められる。 |
9. 術前に、継続的抗血栓療法の実施を妨げる要因を確認することが勧められる。 |
10. 術後の出血性合併症に対する適切な対応が求められる。 |
他の治療法 |
11. FDの適応と考えられる脳動脈瘤の自然歴は明らかではないが、保存的経過観察を選択する場合があることに留意すべきである。 |
12. 脳動脈瘤の形状、部位、側副血行の状態や頭蓋内外バイパスの実施、によって、外科手術や他の血管内治療が比較的安全および有効に可能な場合があることに留意すべきである。 |
策定委員 |
日本脳神経外科学会
飯原 弘二;九州大学 脳神経外科
大畑 建治;大阪市立大学 脳神経外科
川原 信隆;横浜市立大学 脳神経外科
日本脳卒中学会
小笠原 邦昭;岩手医科大学 脳神経外科
峰松 一夫;国立循環器病研究センター
矢坂 正弘;国立病院機構九州医療センター 脳血管・神経内科
日本脳神経血管内治療学会
石井 暁;京都大学 脳神経外科
根本 繁;東京医科歯科大学 血管内治療学
宮地 茂;大阪医科大学 脳神経外科
坂井 信幸;神戸市立医療センター中央市民病院 脳神経外科(事務局担当) |